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「NEN,GOO!~お江戸のスターが勢ぞろい」(池袋あうるすぽっと、東池袋) 篠谷聖、Luke.C、我善導、田中精 [演劇]

 1972年生まれ、30代の4人の俳優による演劇ユニット、30-DELUXの清水順二さんがプロデュースするジェイズプロデュース(J’s PRODUCE)の旗揚げ公演です。
 税金をテーマにすると言うことで、「NEN,GOO(年貢)」というタイトルになっていますが、前宣伝どおり、「演劇的娯楽エンターテインメント」、「爆笑チャンバラ・ミュージカル」です。

 新しくオープンした東池袋の「あうるすぽっと」の舞台に立ちたいという清水順二さんの願いから始まった企画ということでしたが、プロデーサーに徹した清水さんに舞台上での出番が無いという大きな誤算があり、千秋楽の舞台挨拶で、ようやく舞台に立てたというオチでありました。

 実際、清水さんが舞台にいなかったのは、ちと寂しい感じでしたし、ロビーでプログラムと台本を売る清水さんの姿は・・・、プロデューサーは大変だなと思わせるものがありました。

 作家の小野真一さんと、演出家の宇治川まさなりさん、お二人とも公演を観るまで、存じあげなかったのですが、なかなか良いお話でありました。
 もちろん、キャストも良かったのですが、やはり脚本、演出の良さも目立つ作品でした。

 基本はドタバタ、ギャグ・コメディですが、悪役の我善導さんがなかなか良い芝居をしてくれるので、休憩無しの2時間余り、結構、楽しめます。

 さくら(山崎真実)を巡って、小次郎(篠谷聖)と武蔵(Luke.C)が争うシーン、危ないから剣はダメと言う、さくらの希望により、剣術ではなく、なぞなぞ対決になってしまいます。
 これは、これで、十分に笑えるギャグ・コメディなのですが、このシーンは、武蔵と小次郎が松平(我善導)に殺された桜の敵討ちを諦めて、刀を捨てる最後のシーンへと繋がっていきます。

 愛する人が殺された時、生き残った人は、復讐や敵討ちを叫びますが、殺された人、死んだ人は、本当に、更なる殺し合い、殺戮を望んでいるのでしょうか。
 天然ボケの桜の願い、理屈ではなく、感覚的な直感的な願いこそが人の怒り、感情を制することができるのかも知れません。
 人間は、所詮、理性で感情をコントロールできるほど、知的な生物ではないようです。

 死んだ人と話のできる、お蝶(宮田聡子)と、見えない幽霊とのやりとり、これも、一つのギャグ・コメディですが、死んだ人(さくら)の思いというものを今一度、振り返る契機を与えているように思えます。

 全体に上品な笑いと嫌みにならない程度のギャグ、悪役の松平(我善導)のワルに徹した潔さなどが目に付く作品でした。
 特に、松平が叫ぶ「話し合いなど通用しない心底悪い奴らはいる」、「形を変えても刀、武力はなくならない」、などの台詞は真実でしょう。話せば分るなどと言うきれい事が通じるほど、世の中は甘くありません。そして、「決して悔い改めないから、今すぐ殺せ」という松平の叫びも真実でしょう。

 死刑制度は無くならないし、軍隊も武器も無くならない。それが現実の人間の世界です。
 正義の名の下に際限なく繰り返される戦争、復讐と報復という殺し合いの連鎖、そんな現代社会においても、なお、夢のような理想の平和を求めるセンチメンタルな信条は、存外、好きです。

 最後に、キャストについて、一言二言。

 篠谷聖くんは稽古で声を潰してしまったそうで、歌のシーンなどは、ちと苦しかった。山
崎真実さんが唱和してくれると、何とかなったけど・・・。
 歌はともかく、芝居の方は随分と良くなったなと言う感じ。踊りや殺陣は若くて運動神経が良いから、問題ないでしょう。振りをちゃんと憶えられるかどうかだけではないかな。
 篠谷くんの芝居を観ていて・・・、植原卓也くんに似ているなと感じました。いつか、この二人の共演を観てみたい気がする。

 指の怪我を押して頑張っていたLuke.Cくんも悪くはないのだけど、何か、ちょっと物足りないものを感じてしまいました。ルドビコ★の「彩遊記」やテニミュの比嘉中の時の方が良かった。Luck. Cくんは動きの大きな役の方が似合うかな。篠谷くんの細かな仕草や表情が良かっただけに、ちと対照的だったかも。
 天然のさくら(山崎真実)とお馬鹿な武蔵(Luck.C)のコンビは、なかなか良かった。

 田中精さんは、芝居よりも、最初のトークの方が面白いかも・・・。
 利休役の武藤晃子さんも、なかなか良かった。

 ところで、ギャグやコントの弄られ役、虐められ役が可哀想に見えるような芝居は、あまり好きではない。
 この点、「NEN, GOO」の笑いは暗さが無くて、明るくて良かった。
 お伝(磯久美子)は男に縁がないということだが、しっかり小次郎に膝枕させたりしていて、あまり可哀想という感じはしない。
 お竜(押田美和)は男勝りで、優男(やさおとこ)の小次郎や、お馬鹿な武蔵よりも腕が立ちそうなので、可哀想という感じがしない。
 品のない笑いやギャグは・・・観ていて辛いものがある。
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