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映画「ラフ」 速水もこみち [映画]

 一人の女性(高飛込み選手)を二人の男性(競泳選手)が争うという1980年代末の日本を舞台にした青春恋愛ドラマなのですが、シリアスに徹しきれずに、コメディにもなれない、どこか中途半端な作品です。

 ストーリーの展開にしても、お互いに嫌っていたはずの主人公の大和圭介(速水もこみち)が何故、二ノ宮亜美(長澤まさみ)に惹かれていくのか、どうも判りづらく、無理矢理、仲西弘樹(阿部力)と恋のライバルに仕立て上げようとする感が無きにもあらずという感じでした。

 むしろ、二ノ宮(長澤)の立場から、最初、人殺しと言って嫌っていた大和(速水)を好きになる過程を追っていった方が良かったように思います。悪い先入観を持っていた相手が意外に良い人だったと知ると、かえって親しみや好意を感じるというのは良くあるパターンですから、当たり前すぎて面白みには欠けますが、見る方としては判りやすくなります。

 7月に公開されて、邦画満足度でトップとなった「ラブ★コン」はコメディに徹していましたから、温水洋一さんのカツラ教師も映画の中にフィットしてましたけど、「ラフ」での水泳部顧問役の八嶋智人や、喫茶店「チロリン」の店長役の徳井優は完全に浮いているように感じました。いわゆる滑った状態で、なんか寒いものを感じました。

 また、寮の管理人(渡辺えり子)によるタイトル「ラフ」の説明シーンもわざとらしくて、説教臭く、正直、聞くに堪えないところです。せっかく管理人の娘(黒瀬真奈美)がラフ画を描いているのですから、わざわざ台詞で語ることもないように思いました。

 漫画であれば、あだち充の独特の世界観ということになるのでしょうが、それを映像化、しかも実写で表現するのは難しかったようです。やはり、アニメに留めておくべきだったのかも知れません。

 主役の2人、速水もこみちと長澤まさみ、それに恋敵役の阿部力、親友役の石田卓也が割と真面目な芝居をしている中で、下手なギャグをされても困るなというのが正直な感想です。

 ところで、大和圭介(速水もこみち)の親友で高飛び込み選手の緒方剛を演じた石田卓也くんは、なかなか良かったです。特に、かなりクサイ台詞を大和(速水)に真剣に語る辺りは、まさに熱血スポーツ少年、青少年の模範という感じが良く出てました。
 9月末に公開される映画「夜のピクニック」にも出演するそうなので、楽しみです。

 そう言えば、この映画、5月にクランクアップして、8月に公開という映画としては、かなり短い待機期間(公開待ちの状態で、暫く寝かせておいて、人気を盛り上げる期間。もしくは、上映してくれる映画館を探す期間。)となっています。
 公開を急ぐ理由が何かあったのでしょうか。

 最後に細かいことを一言。
 この映画の設定は80年代末なので、今時の高校生の必須アイテム、携帯電話は登場しませんが、なぜか男性競泳選手がスパッツやワンピースを着ています。これらの水着を競泳選手が着るようになったのは、2000年のシドニー・オリンピックの頃、選手ではイアン・ソープ辺りからでしょう。
 80年代末なら、当然、ビキニでしょう。

 劇中、大和(速水)と二ノ宮(長澤)の一日デートのシーンで、30年間続いた映画館が閉館していましたが、テレビが一人一台と言うぐらいに普及し、レンタルビデオも盛んだった、あの時代、街の映画館が次々と閉鎖していった頃を偲ばせるようなシーンもあったのですから、もう少し拘っても良かったのではないでしょうか。
 今や映画は大規模なシネコンで見る時代なので、あのシーンには、思わず歴史を感じてしまいました。

[追記]
 「ラブ★コン」でおかしな人力車夫を演じていた田中要次さんが大和(速水)の祖父役で写真だけですが、出演しています。この辺りも「ラブ★コン」を意識しているのかなと思わず思ってしまいました。


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