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「烏賊ホテル」(俳優座劇場) 及川健、渋谷哲平 [演劇]

 創造集団トパーズによる「をんな・物語」の第1弾として上演された「烏賊ホテル」を六本木の俳優座劇場で観てきました。
 「をんな・物語」とは、女性作家の作品を集めた公演ということですが、創造集団トパーズというのがどんなものかよく分からず、とりあえず及川健さんが出演すると言うことで観てきました。

 さて、俳優座劇場に入って、最初に驚いたのは越川大介さん宛のお花の多さと、関係者らしいスーツ姿の男性客の多さです。男性俳優のみの公演とはいえ、女性客の多いStadio Lifeの公演とは全く違う光景でした。もっとも、僕自身も仕事帰りのスーツ姿だったので他人のことは言えないのですけど・・・。

 越川大介さんは元々はコメディアンで、現在は演劇カンパニー「D.K.HOLLYWOOD」を主宰し、劇作家・演出家・俳優として活躍されている方だそうです。外部公演は12年ぶりとか・・・。純粋に俳優として舞台に上がるのは滅多にないと言うことで、今回は貴重な公演と言うことだったようです。

 さて、芝居の内容は、一人の女性が次々と男と出会っては別れを経験し、別れの度に自殺を図り、そして再び男に巡り会って、子供を産むという普通では考えがたいようなものですが、これが意外と自然に感じられるのは、脚本の良さか、役者のなせる技か・・・。

 異母兄弟ならいざ知らず、互いに存在を知らなかった異父兄弟などという、通常は考えられないような、非常識な設定をさほど違和感なく作り上げてしまうのは、脚本家の岡本螢の非凡な才能でしょうか。

 四人の異父兄弟が一堂に会するのは、1993年5月のある一日(10日?)、わずか数時間のうちに、それまでの人生の積み重ねが無に帰してしまった人など、様々な人生模様が語られます。
 壁に掛けられている93年5月のカレンダー、MADE IN MALAYSIAと書かれた船井電機のテレビデオの段ボール箱など、小道具の細かさに感心しました。

 4人の異父兄弟という不思議な設定と、四者四様の父親、母親への複雑な想い・・・、そんな4人の想いを繋いで、40年間、変わらぬ姿のままの「木馬」・・・。
 4人の父親のうち、まともなのは三男の父親だった警察官ぐらい。その三男は、母親は死んだと信じて込んでいて、死んだ筈の母親からの手紙に困惑しているのですが、そこに更に、見知らぬ異父兄弟が三人も現れて・・・。

 後から振り返ってみると、とんでもない話だなと思うのに、芝居の最中には意外と納得してしまって、何故か心温まる想いになると言う不思議なお話でした。

 「烏賊は死んだふりして空を飛んでいる鳥を餌にするという」なんてこと、絶対に有り得るはずがないのに、そんなこともあるのかなと、つい思ってしまうような不思議な空間を醸し出していました。

 ちなみに、「烏賊ホテル」というのは、四人の母親が自殺を繰り返しては、次々と男を引っ張り込むことから、名付けられた蔑称ということですが、なかなかお洒落なネーミングです。昨今の学校でのイジメは、もっと安直なネーミングのようですが・・・。

 ところで、喜劇俳優としてはベテランの越川さんも良かったのですが、それ以上に渋谷哲平さんの演じる温厚で常識人としての大学の先生と、幼少期の思い出や両親のことを語るときの姿とのギャップがとても面白かったです。

 渋谷哲平さんは30年近く前、及川さんが生まれた頃のアイドル歌手で、最近ではウルトラマンダイナやウルトラマンコスモスに出るまで、すっかり忘れられた存在だったのですが、意外に面白い演技でした。

 さて、肝心の及川さんが登場するのは物語の後半で、ストーリーの解説者、手品の種明かしのような役回りを演じています。
 ややオーバーなアクションに違和感が無きにしも非ずでしたが・・・。

 ホストという設定は、及川さんのキャラに合っているだけでなく、母親(小泉とわ)の昔話を聞き出すという役回りにはぴったしの職業でしょう。なかなか心憎い設定だと思いました。

 それはそうと、及川さんの上げ底、ハイヒールではない靴を履いた姿は舞台上では珍しいのでは?

 いずれ何かの機会に再演されると良いのですが・・・、劇場で配られたアンケートには、再演希望と書いておきました。

 最後に・・・、劇場には林勇輔さんと藤原啓児さんもいらっしゃっていました。


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