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「ウラノス」(青山円形劇場、渋谷・表参道) 前川知大、今井朋彦、土屋裕一、津村知与支 [演劇]

 土屋裕一(*pnish*)さんと、「ある日、ぼくらは夢の中で出会う」に出演していた津村知与支(モダンスイマーズ)さんを観に行ったのですが、SF作家?の前川知大さんの脚本、「恐れを知らぬ川上音二郎一座」で、音二郎(ユースケ・サンタマリア)と敵対する一座の花形役者 飯尾床音(いいおとこね)を好演していたベテラン俳優今井朋彦(文学座)さんの演技が目立つ作品でありました。

 森内家の裏庭の地下に開いたワームホール(鬼の口)の出口が実は50年後の森内家の裏庭の上空だったという設定が面白いだけでなく、そのワームホールは一方通行で、片方からしか進入することが出来ず、また、戻ることも出来ない、さらに、横穴を掘って、鬼の口(ワームホールの入り口)を下から覗くと、青空が見えて、鳩が通過できるという設定も実に面白い。

 序でに言えば、今井さんの鳩の物まねも、なかなか面白い。

 こういうワームホールであれば、出口は、理論上、全く感知することが出来ないはずなので、森内家の裏庭の上空に、ぽっかり出口が開いていて、50年前の世界に通じているとしても、不思議はありません。
 まさに、何もない空中に、突然、物体が出現するということになる筈です。

 また、この実実を知ったときの八雲(土屋裕一)弁護士と古橋(今井朋彦)教授?の反応がなかなか面白い。
 ワームホールの存在そのものを信じていない八雲は、そんなことはあり得ないと、頭から否定してしまうのに対して、古橋は、確率は低いが有り得ると認め、と同時に、そのことの意味することに愕然としてしまう。

 つまり、「人間は糞をするんだ」という古橋の台詞そのままに、鬼も、また、50年後の世界に、口から飲み込んだものを糞として出すということの意味に、古橋は気が付いてしまう。

 自分の研究のためなら、他人を犠牲にしても良いという悪辣な面も持ちながら、一方で、人としての良心も、真実を尊重する誠実さも持ち合わせている古橋という男を巧みに演じる今井さんは、さすがベテラン俳優と感じました。
 「恐れを知らぬ川上音二郎一座」の時も、音二郎の才能を認め、敬意を感じつつも、音二郎の行動や無責任さに強く反発するという複雑な役をこなしていらっしゃいましたが、お陰で、土屋さんや津村さんが霞んでしまいました。

 ところで、タイトルの「ウラノス」は「温羅(うら:桃太郎伝説に登場する鬼の名前)の巣」の掛詞かとも思いましたが、素直にギリシャ神話の天空神、ウーラノスのことだそうです。

 また、50年前の三浦の妻の病気はハンセン(氏)病でしょうか? 劇中では何も触れませんが・・・。

※ワームホール(Wormhole)
 今のところ、理論上の産物で、実在は証明されていない。
 我々が住んでいる世界、すなわち、x軸、y軸、z軸の3次元空間と時間軸とからなる4次元構造の時空のある一点と、別の離れた一点とを結ぶ、虫食い穴の(ワームホール)のようなもの。


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ミキ

はじめまして。
最近舞台を観るようになりまして、こちらのサイトを見つけました。
優しい視点と穏やかな文章が素敵だと思いました。
今後はこちらのサイトを参考にしていろいろな舞台を観てみようと思います。
これからも更新を楽しみにしています。
by ミキ (2008-02-12 20:40) 

frhikaru

ミキさん、こんにちは。
「優しい視点と穏やかな文章が素敵」とは、過分な褒め言葉をありがとうございます。
これからも時々、覗いてやって下さいませ。
by frhikaru (2008-02-12 21:22) 

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