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「僕たちの好きだった革命」(シアターアプル、新宿) 中村雅俊、塩谷瞬 [演劇]

 戦隊ものヒーローから王子様キャラへ、そして最近は映画俳優として活躍している塩谷瞬くんがストレートプレイに初挑戦と言うことで、「僕たちの好きだった革命」を観て来ましたが、ベテラン俳優、中村雅俊さんのパワーに、すっかり圧倒されてしまいました。

 60年代末の学生運動の闘士が30年の眠りから醒めて現代に蘇り、再び学校当局と闘うというストーリーですが、全編コメディタッチの流れの中で意外とシリアスな内容が展開していきます。学生運動に参加した人も参加しなかった人も、この舞台を観ていると昔懐かしい青春時代、高校生の頃を色々と思い出してしまうというような内容です。曰く、昔は自分も若くて元気があった・・・、という感じです。

 30年の眠りから覚める主人公の山崎義孝を演じる主演の中村雅俊さんは1951年生まれで、山崎とほぼ同い年、色んな意味でパワフルな世代の代表です。50歳を過ぎても、なお高校生を演じられる若さを持っています。
 一方、現代の高校生、日比野篤志を演じる塩谷瞬くんは1982年で、やはり日比野とほぼ同い年です。公開中の映画「龍の如く」では、お転婆ギャルに振り回される気の良い兄ちゃん役でしたが、この舞台でも元気な女の子、小野未来(片瀬那奈)に振り回されるお調子者を演じています。舞台演劇、初挑戦にしては、上出来だったのではないでしょうか。

 学園ものは登場人物が多くて、それ故、テレビや映画では若手俳優の登竜門にもなるのですが、予算の限られた舞台では一人の役者が何役も演じるということになります。この舞台演劇ならではの小細工を逆手にとって、観客を笑わせるネタにする趣向などは、なかなか楽しめました。
 その他にも随所で、役者がユーモア溢れるナレーションやコメントを付け、下手をすれば、一昔前の前衛演劇に成りかねないテーマを上手に楽しめる舞台に仕上げていました。
 それでいて、「正しく戦う」というテーマをはっきりと主張する辺りは脚本演出を手掛けた鴻上尚史さんの力量なのでしょう。昨今、勝ち組、負け組という言葉が流行っていますが、「正しく負ける」というのも大切なのだなと改めて思い起こさせられました。

 それにしても、60年代の若者は随分とパワーがあったのだなと、改めて感じる演劇でした。客席の観客も比較的年齢が高かったような・・・。
 学生運動の闘士たちも、その後は意外と堅実な道を歩んで、大企業の経営者や各界の指導者になったりしているようですが、どのような分野でも力と情熱のある人は然るべき成果を挙げると言うことなのでしょう。

 僕自身は鴻上尚史さんよりも、さらに下の世代なので、60年代の学生運動は全く知りません。それでも学校には、多少は昔の名残や余韻があったように思います。今の高校は大学受験予備校と化してしまっているようですが、昔の高校生には夢があったように思います。過信や傲慢かも知れませんが、自分たちは何でもできるという不遜な気概があったように思います。今から思えば、お笑い種ですが・・・。
 それでも、昔は親元から離れて独立することを考えている若者が多かったのではないでしょうか。一生、自室に閉じ籠もるとか、親の世話になるとかなんてことは夢にも思わなかったように思います。もっとも、夢破れ、尾羽を打ち枯らして、故郷に帰る姿は想像しないでも無かったですが・・・。

 ところで、母校の高校教師になった日比野(塩谷)は20年後、やはり兵藤明教頭(大高洋央)のようなってしまうのでしょうか。それとも、山崎(中村)のような純真さを心の片隅にでも失わずにいられるのでしょうか。パレスチナに行ってしまったという小野(片瀬)と共に、また一つの物語が描けそうです。


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